社員旅行

会社に勤め初めて二年になると、社員旅行が待ちどうしくなったりする。
その年の社員旅行は、どこかのスポーツレクリエーションと宿泊施設が
いっしょになったようなところだった。
宿泊所につくと若手社員の私たちは一つの部屋にあつまり、明日なにをする?、などと
盛り上がった。
このころ「男女7人夏物語」というのが流行っていた。
明石屋さんまと大竹しのぶがくっついたきっかけになったテレビドラマである。
集まった部屋の居間で十何人の二十歳代の男女がテレビに見入っている。
その部屋の中には恋の感情がいくつも交差していた。
さんまとしのぶはフェリーの船上でかなり深刻な回想をしていた。
この先、どうなるのだろうというところで終わり。
私の片思いの相手はE子であった。
E子はおしとやかでちょっと童顔の子で結構もてた。
その正反対の女性がN嬢で快活、スマートで目鼻立ちのととのったひとであった。
N嬢は同期で親友のMさんとよくいっしょに行動した。
Mさんは惚れた男がいて、ある社員旅行の晩、思い切りその人に抱きついて、
というよりは、その人の手に引きずられてしがみついてエレベーターの前にいた。
浴衣姿の社員らが行き交う目の前だったので、完璧な社内公認の仲になってしまった。
私はといえば全く情けない話で、E子にアプローチできずにただただ好きだという
感情に振り回されていた。
それとは別に、私はSさんという年上の女性に気に入られていた。
E子のことは忘れてSさんを方へ向き直れば、私の人生にも新たな展開もあっただろうに、
と思うと残念である。
その後、あのテレビの部屋にいた何組かの男女は結婚した。

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