ストレス

ストレスとコンピュータは煙と火のようなものだ。
火をおこせば煙が立つし、コンピュータが動作すればストレス人間が生まれる。
ストレスの溜まった人は表情が強ばり、言葉がきつくなり、
他人への配慮が散漫になり、体型が極端に太ってしまったりもする。
人当たりがきつくなれば、当然周りの人から避けられるようになり、
こんどはその人間たちを恨むようになって悪循環を繰り返していく。
これは本人の責任ではなくストレスによる被害者というしかない。

コンピュータの職場の人間は誰でも多少のストレスを抱えていているので、
極度のストレス人に対して思いやりは起きにくい。
誰かが倒れたりしない限りは上司も関わったりしない。

ヴァリス2の開発中にも極度のストレス人間に出会った。
その人も過酷な労働条件の中ですり潰されていった感じがした。
仮にA氏と呼ぶ。
初めのうちは私もA氏を普通に接していた。
やさしい先輩といった感じでいい人だと思ったのだが、
以前から勤めていた人たちはそろってA氏を避けていた。
派閥でもあるのかと思っていたが、事実はすぐに判明した。
仕事中に突然、大きな物音。つづいて大きな声の独り言が始まった。
A氏の悪癖であった。
これをやられると周りの人は皆怯えて仕事にならなかった。

A氏は上司から常に仕事を急ぐようにいわれていたようで、
働きの悪い若手社員との間に挟まって、ストレスを溜めていたフシもある。
私とTさんとOさんとKさんにA氏を交えてに会議にまで発展してしまった。
生意気だったのは私たちのほうであったが、デザイナー全員が怯えていたし、
自分自身もこのままでは恐かったので正面切って対面したのだった。
会議のおかげで暫くは平穏な職場に戻った。

結局、会社を辞めたのは私たちのほうで、A氏はその後も会社に貢献し続けた。
風の噂ではA氏は普通の人に戻ったということである。
今となってはA氏と私たちの出会いのタイミングが悪かったとしか言えない。
でもあのときA氏の机にあったお酒の瓶にはかなりびびっていた私であった。

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