油部屋


A先生は新しいゲームのアイデアを組んでいると、人づてに聞いた。
BASICを使ってプログラムを組んでいるということだった。

電脳学園シナリオ1・PC9801版のリメイク版を作って欲しいと依頼された。

電脳学園シナリオ1はPC8801SR版とPC9801版の両方が発売されていた。
IKさんによって組まれたPC8801SR版は評判が良かった。
一方、PC9801版の仕上がりはゲームソフトというよりはビジネス用ソフトの感触に近い。
プレイヤーを楽しませるには力不足だった。

これを作り直して電脳学園3トップをねらえと同じ仕上がりにするのが仕事だった。
絵はA先生によって描き直されることになった。

PC9801版の電脳学園シナリオ1は、私が最初に触れたガイナックスのソフトだった。
音楽データもKJさんの手によってPMD98用に作りかえられた。
作曲はSYさんだった。
SYさんはKJさんのアレンジに難色を示して、私の立ち合いのもと音色で修正をした。
A先生はちょっと落ち着かない様子でその作業をみていた。

電脳学園1ver2.0となる、このソフトのシステム全体の作成は私ひとりだけだったので
オープニングの夜明けを作ったりロゴを回したりと遊んでみた。

ガイナックスはNHKの「ふしぎの海のナディア」制作もあり、人が増え狭くなっていった。
私とIKさんの作業場所は油部屋と呼ばれる別室に移されることになった。
油部屋と聞いたとき、灯油を置いてある倉庫のようなところを想像した。
それは来たばかりの時、社内の暖房器具が石油ストーブだったからだ。
油部屋と呼ばれた本当の理由は、脂性の人がそこで寝泊まりした部屋だということだった。
航空機マニアで写真撮影の専門家だった、その人がいなくなり、
その部屋を使わせてもらうことになったのだ。

便所の横を通り、廊下の突き当たりにある畳敷きの部屋。
それは、おそらく一階へ通じる階段を塞いで作った部屋だろうと感じた。

つづく


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