名古屋入り
出張といえば、新幹線というくらい、ずいぶん乗ったような気がする。
新幹線の座席は少し大きめなので、ゆったりと座れる。
特に岡山から東京に帰る方向は空いているので、1ボックス分を一人で使えたりする。
思い切り足を延ばし、柿の種をほおばったりする。
時速200kmとはいえ、列車の旅はいいもんである。
9月下旬ごろ、私とKさんとTさんの三人は名古屋へ向かった。
名古屋駅で降りると、そこから地下鉄に乗り換える。
名古屋の交通機関は主にこの地下鉄と自動車である。
名古屋駅前は意外と閑散としており、繁華街でにぎわうのは地下鉄で一つ目の
栄というところである。私たちは栄のチサンホテルというビジネスホテルに
泊まることなっている。一泊ひとり4000円だったであろうか。
繁華街のそばということもあり、残業が続いても退屈にはならない。
まわりに人がいるというだけで気が楽になるものだ。
ただ、困ったのは洗濯で、朝フロントに預ける形になるのだがやたらとお金がかかる。
パンツや靴下くらいは風呂場で洗おうかという感じになる。
朝食はホテルの一階でスクランブルエッグにベーコン、パンとコーヒーという具合に
恵まれた。ただし、こいつもお金がかかる。
でも過酷な仕事で大量の残業代がついていたから、何とかやっていけた。
現地は栄から地下鉄で15分くらいのところの地図の会社だった。
社内にはすでに新型のハードウェアが鎮座していた。
玉野で私たちがセッティングしていた奴である。
そのそばには航空写真から地図を起こすための機械が何台か設置されていた。
これは完全な機械式のやつで、奥のパネルに航空写真を張り付け、中央の双眼鏡のような
ものを覗きながら、ハンドルを回転させペダルを踏むとシャフトを伝わって、
横にある畳一畳ほどのテーブルの上の紙に地形を書き込むという、
説明するだけでも面倒くさい機械である。
その部屋はガラス張りで誇りが入らないようになっているのだが
私たち三人はその機械の狭間、一畳のスペースでその日から2週間休みなしで作業をこなした。
こなしたというより、ごまかしごまかし開発を続けたというほうが正しい。
その会社の担当の人も私たちと一緒に残業を強いられた。
ひたすら待つ、という残業である。
その人があるとき機械の周りを掃除したら、掃除機の中身が髪の毛でいっぱいになったと驚いていた。
もちろん、過酷なまでに神経をすり減らした私の髪の毛も含まれている。
つぎ
もどる