油絵
スクーリング中でも仕事が続いているため会社に顔を出さなければいけない。
仕事自体はPC9801というパソコンを使ったものだった。
今なら、パソコンの一台でも買えば自宅で作業できるのだが
この当時、パソコンはかなりの高額商品だった。
NEC社製のPC9801は仕事用としてやっと買えるもので
私のような薄給のサラリーマンが買う代物ではなかった。
パソコン本体に高解像度カラーモニタとフロッピードライブ50万円を突破して
更にメモり512Kと10MBハードディスクをつけたら百万円位になるだろうか。
仕方なく夕方、会社へ出向いてはパソコンをいじっていた。
スクーリングにも慣れて、木炭デッサンが終わるといよいよ油彩である。
油絵の具を使ってキャンバスという布地に絵を描く。
キャンバスは麻の布に白の絵の具を塗り固めたもので、
これを木枠に釘で打ち付ける。
キャンバスはじゅうたんのロールのように丸めて売っている。
1センチ単位で切り売りしているのもあるのだが
私は5メートル位の高級キャンバスのロールを丸ごと買ってしまった。
そのロールは今でも押入の上に眠っている。
釘やトンカチも買った。
油絵の画材は古いものほど価値があるように思える。
たとえば昔の絵の具などは顔料という岩石や炭、金属を砕いたものが使われていたが、
時代が変わる毎に手軽な石油製品に置き換わっていっている。
石油で出来た顔料で描いた絵は何世紀ももたないだろう。
キャンバスだって古いほうが、接着剤などが乾ききり成熟が進むのでいい。
油絵というと、絵の具の形がでこぼこと浮き出る風景画のイメージがあるが、
元々の油絵は表面がプラスチックの板のように平らに仕上がっているものらしい。
絵の具の種類が多いのも油絵の特徴だが、本当に必要な色は15色のみだと教わる。
そしてつぎに多いのが筆の種類。
剛毛筆と軟毛筆がありそれぞれ3本ずつの太さをそろえる。
私は学校で、テン毛の筆を使っていたので油絵の軟毛もそれをそろえた。
テンの筆は貴重品で一本2千円以上する。
しかも在庫のない店がほとんどで、5〜6件の画材屋を探し歩いてやっと揃えた。
なにがそんなにいいのかというと、描くのがとても楽なのだ。
マジックで描いているのかと思うくらいくらい楽に描ける。
テン毛の筆の書き味を知ってしまうと普通の筆が馬鹿らしくなってしまう。
ただし、タッチを生かす書き方には向いていないので、その場合は剛毛筆を使う。
馬のしっぽの毛だ。
つぎ
もどる