鉄骨CAD

スクーリングの夏も終わり秋がくる。
国電(この頃はそう呼んだ)でスクーリング仲間と別れ際、
来夏の再会を約束したがそれは叶わなかった。

私のつぎの仕事は、FRED(フレッド)と呼ばれる鉄骨CADの
仕事だった。
このソフトウェアが自分が関わったCADシステムの中で
最大の規模を誇る。
このソフトを作っている会社は確かNECとNTTと三井造船が共同で
作ったINSという会社だった。
FREDの基本設計は私がいた会社の上司にあたるHさんという人が
中心になって作ったもので、プログラミング作業自体もかなり進んでいた。
Hさんはロケットを宇宙へ飛ばすためのシミュレーションソフトの
開発に携わった人で科学技術系プログラミングの大家だった。

開発者は10名近くいたと思う。
私は補充のための要員で、梁の図面出力の一部を担当した。
鉄骨CADとはビル建築に必要な鉄骨を組むための設計システムだった。
鉄骨は主に、柱、梁、仕口、などからなるもので、
それをつなぐ継ぎ手、ボルト、溶接部などを組み合わせている。
少し専門的で私もよく覚えていないので、細かい説明は省略するが、
このCADの便利なところは、これらの設計をコンピューター上で
対話形式により、かなりな部分を自動設計でき、しかも図面を自動的に
必要なもの全て製図してくれるところにある。

たとえば、ボルトで柱と梁をつなげる設計をするとする。
そのとき以前ならばボルトを一本一本定規で位置を合わせ鉛筆で書いていた。
けれどもこのシステムではタブレットでポンと設定するとそこにボルト数本が
自動設計して描き込まれ、プロッタという機械をとおして図面上に高速で書いてくれる。
このプロッタという機械は横幅が2メートルもあり、コンピュータの指令によって
人間の何百倍のスピードと0.01ミリという精度で何十メートルもある
製図用紙に書いていく優れたものだ。
そのプロッタの最も激しく動く部分がペンの部分だ。
この部分は芯を自動的に交換するシャープペンになっていて、
ぶれないように鉄の塊になっている。
ある社員の人が製図の具合を見ようと顔を寄せた途端に、
これに殴られたらしい。それくらい強烈な装置だ。

つぎ

もどる