クイズゲーム

私がガイナックスから受けた初仕事は「電脳学園3トップをねらえ」だった。
「トップをねらえ」は当時のアニメファンの間で話題になっていたオリジナルビデオアニメで
Oさん企画のAさん監督という、黄金コンビが携わったアニメだった。
全三巻六話のアニメをSB君に見せてもらった。
面白かった。

その主人公の三人娘が出てくるクイズゲームだった。
私はコタツの上のPC286Vに向かってプログラムを組んだ。
初めに作り始めたのはオペレーティングシステムだ。
いまではウインドウズやマックOSがパソコンのオペレーティングシステムの主流だが、
当時のPC9801シリーズのOSといえばMS−DOSだった。
けれどもMS−DOSを持っている人はお金持ちの人で、
家庭用パソコンとしてPC9801を買った人の半数以上は
MS−DOSを持っていないか、使い方の判らない人だった。

そこで、フロッピーディスクを入れてスイッチを入れるだけで
すぐにゲームが出来る状態に持ってくるのがパソコンゲームの常識だった。
9800円のゲームソフトに3万円近くするMS−DOSを付けるわけに行かないので、
自前で作ってしまおうというわけである。
これをDOS(ドス:ディスク・オペレーティング・システムの略)と呼ぶ。

DOSを作れてしまうのはとてもかっこいいので、私は張り切った。
本屋に行ってはPC9801の解析マニュアルを買い込み、
フロッピーディスクのドライブの仕組みを研究、
独自にディスクを読み込むことに成功した。
MS−DOS上で走るプログラムの構造も解析して、
自分のDOSの上でゲームが動くようにした。
私は自分のDOSを「EXELOADver0.0」と名付けた。

私よりも前に「電脳学園2」のPC9801版を担当していた、TIさんも
独自のDOSを作っていた。
私はSGさんにそのDOSを組み込んだデモを見せてもらった。
それはフロッピーが回り始めて一瞬で動いた。
早業である。
TIさんはF社に所属していたプログラマであった。
F社といえば私が携わったヴァリス2のT社とライバル会社だ。
それにF社のプログラマといえば業界のトップクラスであった。

私のDOSのデモも持ってきてSGさんに見せた。
私のは動くまで5秒くらいかかったが、その動作がMS−DOSと似ていていい感じだった
手作りのDOSは機能こそMS−DOSに及ばなかったが
非常にシンプルで、しかも無料というところがいい。
改良を加えて、読み出しのスピードもMS−DOS並にした。

PC9801は四台までフロッピーディスクドライブが付けられた。
普通のゲームのディスクは必ずドライブ1に入れなければならず、
間違ってドライブ2に入れたりすると動かない。
けれども私はどのドライブに入れても自動判定して動くように作った。
パソコンを判らない人が間違って入れても動くようにしたかった。
でも、このアイデアは地味すぎて誰にも気づかれなかった。

私は先手必勝で、二週間ぐらいで絵を表示して動くものを作った。
これはプログラマがお客さんを説得するためのテクニックの一つだった。

仕事が早いということで信用がとれて、以後の仕事がスムーズに運んだ。

絵はガイナックスのアニメーターによって原画が作成中だった。
そして音楽データ作成を担当していたのは、
今では小説家であるSYさんだった。

つぎ

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