No.5 夜の誘惑
 
晩ご飯はサラダとビールだった。
僕は和牛のステーキとか食べてもいいと思うのだけれど。
煮魚とか、エビチリソースとか、総菜でもいいし。
女優だから、体型には気を使っているのだろうな。
でもタンパク質がたりないと思う。
 
「いいよねー、こういうの、新居でふたりだけの夕食」
「楽しいです」
 
ゴマのドレッシングがうまいからいいか。
それに涼子さんは黒の薄着だ。
 
「めがねくん」
「はい」
「めがねくんはタレントとか好きな女の人いるの?」
「これといって…、チェキッ娘は流行ってますね」
「私のことどう?」
「僕は好きです、涼子さんは僕のこと嫌ってますけど」
「嫌いじゃないよ」
「また同情っぽいです」
「私ね、めがねくんのこと、少しいいなって思う」
「またまた」
「いっしょに居られるのは、好きな証拠でしょ」
「どうなんでしょう」
「アタシのこれ、下着なの、知ってた?」
「テレビで見ました」
「目線に困るでしょ」
 
胸のことだ。
丸みを帯びた生地に少し突き出しているように見えるのは乳首だ。
 
「ちょっと…」
「もっと見ていいよ」
「はい」
 
といわれるとなおさら緊張してしまうな。
涼子さんは媚びる目つきで僕を見つめる。
 
「アタシめがねくんのこと好き」
「ええ…」
 
僕は舞い上がった。
生まれて初めてだ。
 
「お願いがあるの」
「はい」
 
涼子さんは下着の右胸に手をかけると
肌を露わにし始めた。
 
「あのね…」
「はい」
「今度、アタシのカレシつれてくるから、
 お父さんには内緒にして欲しいんだ」
「彼氏…」
「めがねくん、どうなの?、内緒にしてくれるでしょう?」
「お父さんには、隠し事は出来ないのです」
「アタシは女優、社会勉強が必要なの」
「社会を勉強するのに、男の人が必要なんですか?」
 
涼子さんは、柔らかい腿の素足で立ち上がると
僕の後ろへまわった。
 
「耳元でささやくと、ちょっといいでしょ?」
「はい…」
「アタシは他の女とは違うの。ためらわない」
 
涼子さんは胸のポッチを僕の頬にあてる。
 
「お父さんに怒られないですか?」
「ドラマって男と女なのよ」
 
涼子さんの右手は僕の大事なところに触れた。
僕の大事なところには電気が走った。
 
「普通の女の子はこういうこと、してくれないよ」
 
たしかに涼子さんの手つきにはためらいがない。
僕のそこは敏感で少し痛いくらいだ。
 
「カレシも必要だし、めがねくんも必要なの、判ってくれるね」
「お父さんには内緒にしておきます」
 
涼子さんは僕の頬にキスした。
ど、どうしよう…
 
「カレシが帰った後、お礼が待ってるからね、密告しちゃ、ダ・メ・よ…」
 
僕は期待した。
 
つづく
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